営業担当者個人の能力開発という概念が存在するのと同じく、企業の中の営業部等、営業組織にも開発レベルがあります。大きく3つの開発段階に分類した場合、各段階の特徴は以下の通りです。
未開発段階
営業部、営業管理部などの組織はあるものの、組織の業績が営業担当者の属人的な能力や個人的な顧客との関係性によって大きく変動する段階。営業組織の成果=「個人の成果の総和」なので、営業担当者個々人に課せられる目標(ノルマ)達成が最重要課題となる。マーケティング部門は存在しないか存在しても営業部門との連携は弱く、セリングプロセスの序盤からアフターフォローまでを営業担当者が個人的に遂行することもある。組織としての管理が弱くなり効率性が上がりにくい。
統制的段階
営業組織としての生産性を高めるため、テクノロジーの力を活用しながら営業活動の効率化を進めている段階。MA[Marketing Automation]、SFA[Sales force Automation]、CRM[Customer Relationship Management]等を活用しながら、営業活動を組織的に管理する。マーケティング部門との連携や分業も見られる段階。欧米企業の事例を参考にしてこの段階に移行している日本の営業組織が増えているが、管理者が営業担当者に決められたプロセスを守らせることで営業担当者が「セールスマシン」となってしまう弊害が指摘されている*。
発展的段階
営業組織の生産性の向上のため、組織としてテクノロジーの活用やツールの充実を進め、教育の提供をする段階。セールスイネーブルメントという概念を取り入れて営業人材開発を行うこともある。また、営業担当者の現場判断を尊重し営業担当者が顧客のためにベストな提案ができるよう柔軟に支援する。営業担当者には判断力を含めた高度な能力・人間力が求められる。
優秀な人材を採用したり教育を強化したりして営業人材を強化しても、組織の開発が追い付いていないと人材が定着しないという問題が生じます。一方、組織や制度を作ってもそれを動かす人材の開発が進んでいなければ実質的に機能しません。従って営業組織開発と営業人材開発は共に重要な経営上の課題でありテーマだと言えるでしょう。
※論文”Change the Way You Persuade” Harvard Business Review, November 2013.邦題「ソリューション営業からインサイト営業へ」の中で詳しく解説されています。(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー誌2014年7月号)